用語解説

2024.02.22

第二種金融商品取引業とは? その仕組みと第一種金融商品取引業との違いを解説

株式や債券、投資信託といったメジャーな金融商品ではなく、「信託受益権」「ファンド」「社員権」といった、よりマイナーな金融商品を取り扱う業務は第二種金融商品取引業と呼ばれています。

 

この記事では、基本的な知識や第一種金融商品取引業*との違い、業者の登録条件や規制など投資を始めるうえで知っておきたい情報をわかりやすくご紹介します。

 

*クイック用語解説*
*第一種金融商品取引業

信流動性の高い有価証券の売買、勧誘、引受け、店頭デリバティブ取引、資産管理などの証券業、金融先物取引業を営む業務のこと。

 

 

金融商品取引業とは

金融商品取引業とは、「金融商品取引法」に規定されている投資性のある金融商品(金融商品取引法2条24項)を扱う業務のことで、以下の4つに分類されます。

 

・第一種金融商品取引業

・第二種金融商品取引業

・投資運用業

・投資助言・代理業

 

金融商品取引業を行う業者は、金融庁の審査や登録を受けた事業者で、最低資本金等の財産的基盤や事業者としての適格性基準を満たす必要があります。

第二種金融商品取引業とは?

第二種金融商品取引業は、株式や債券、ETFなど市場で取引され流動性が高い有価証券や投資信託などではなく、それら以外の「みなし有価証券」と呼ばれる流動性の低い有価証券の販売・勧誘、募集または私募の取り扱い、市場デリバティブ取引*などを指します。

 

金融商品取引法の第2条2項で定められている有価証券を「第二項有価証券」と呼び、証券または証書に表示されるべき権利以外の権利も有価証券とみなすため、「みなし有価証券」とも呼ばれています。

 

一方で、株式や国債など流動性の高いメジャーな有価証券は金融商品取引法第2条第1項で定められていることから「第一項有価証券」とも呼ばれています。

 

*クイック用語解説*
*市場デリバティブ取引

デリバティブ取引には、主に「先物取引」「オプション取引」「スワップ取引」があり、金融商品取引所など市場で取り扱うデリバティブを「市場デリバティブ取引」という。

 

* 集団投資スキーム持分

集団投資スキーム持分(ファンド)とは、(1)投資者から金銭の出資・拠出を受け、(2)出資・拠出された金銭を用いて事業・投資を行い、(3)当該事業から生じる収益等を出資者に分配するスキーム、にかかる権利、で金融商品取引法により有価証券とみなされました。

引用: 金融庁 金融商品取引法制について

「みなし有価証券」とは?

みなし有価証券(第二項有価証券)は、主に以下のようなものがあります。

 

1. 信託受益権

2. 集団投資スキーム持分(ファンド)

3. 合同会社の社員権、合名会社および合資会社の社員権

 

それぞれの内容について、詳しく解説します。

1. 信託受益権

 

信託受益権とは、たとえば、不動産などの資産を持っている委託者が、信託銀行などの受託者にその財産を信託し、そこから発生する経済的な利益(賃料収入など)を受け取る権利(受益権)を意味します。

信託とは自分の財産を、信頼できる他人に預け、目的に沿って管理・運用してもらうことです。信託受益権は売買することができます。

 

「不動産信託受益権売買」と、実際にある建物などの売買を行う「実物不動産売買」の違いは、以下の通りです。

2. 集団投資スキーム持分(ファンド)

 

集団投資スキーム持分(ファンド)の基本的な仕組みは、権利を有する人(出資者)が金銭などを出資し、その金銭などを活用して事業が行われ、出資者がその対象事業から生じた収益などの分配を出資比率に応じて受けとることができる仕組みです。

 

出資対象となる事業は、太陽光事業やリース事業、スタートアップやイノベーション、共感や支援に基づく地域活性化事業やSDGs関連事業など幅広く利用されていて、みなし有価証券の中でも対象範囲が最も広いものです。

 

3. 合同会社の社員権、合名会社および合資会社の社員権

合同会社の社員権とは、株式会社における株券と似たような権利であり、合同会社の有限責任社員たる地位のことです。

 

合同会社は日本における会社形態の一つですが、出資する人と経営者が原則として同じとなる会社形態のことで、出資者全員が有限責任社員として構成されます。合名会社(全員が無限責任社員)や合資会社(無限責任社員と有限責任社員が各1名以上)と同じ持分会社に分類されます 。

 

株式会社では、株主からの出資を受けて経営者が事業を行い、所有と経営の分離が原則とされています。それに対して、合同会社では所有と経営は一体となります。

 

金融商品取引法では、合同会社の社員権はみなし有価証券として規制対象とされており、同様に一定の合名会社や合資会社の社員権についても金融商品取引法第2条第2項第3号に掲げる有価証券として規制されているのです。

 

以上のように、みなし有価証券(第二項有価証券)が定められたことにより、様々なものが金融商品取引法上の有価証券として規制されることになりました。一方で、企業が新しい事業を行う際に資金調達ができる仕組みが多様化し、一般投資家もみなし有価証券へアクセスする機会が増えつつあります。

第一種金融商品取引業と第二種金融商品取引業の違い

第一種金融商品取引業と第二種金融商品取引業の違いとは何なのでしょうか?

 

金融商品取引業は、前述のとおり、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資運用業、投資助言・代理業の4種別から成り立っています。

 

種別の違いは行うことのできる業務内容の違いであり、種別間に上下はありません。たとえば、第一種金融商品取引業の登録を受けても、第二種金融商品取引業で取り扱う「みなし有価証券」を取り扱うことはできないのです。

 

第一種金融商品取引業の登録を受けた業者は、上場株式や各種債券、外国為替証拠金取引、先物取引などの幅広い金融商品の販売や勧誘を行うことが許可されています。

 

第一種金融商品取引業が扱う「第一項有価証券」では金融商品の取引の幅が広く、多様な投資商品を提供できます。これらの商品は、市場価格が公開されているため、流動性のリスクが比較的低いと考えられています。第一種金融商品取引業を取り扱う事業者には、証券会社や外国為替証拠金取引(FX)業者などがあります。

 

第二種金融商品取引業が取り扱う「第二項有価証券(みなし有価証券)」には、不動産の信託受益権や集団投資スキーム持分(ファンド)などが含まれます。そのため、証券業に限らず、銀行業、リース業、不動産業、建設業といった幅広い業種が参入し、第二種金融商品取引業の登録を受けています。

第一種金融商品取引業が、第二種金融商品取引業よりも規制が厳しい理由

第一種金融商品取引業と第二種金融商品取引業の違いは、取り扱う商品の種類以外にもいくつかあります。

 

金融商品取引法及び監査指針に定められている登録要件のうち、相違箇所の概要(一部)は次の通りです。

これ以外にも様々な登録要件が定められていますが、以下に主な違いをご紹介します。

 

・規制の厳格さ

第一種金融商品取引業は、業務の範囲が広く取り扱う商品が多岐にわたるため、より厳格な規制があります。たとえば、最低資本金5,000万円、自己資本比率規制120%、主要株主規制などが定められています。

第二種金融商品取引業は、取り扱う商品が限定されているため、相対的に規制は緩やかですが、それでも投資家保護のための一定の規制は存在します。

 

・投資家への情報提供

第一種金融商品取引業は、流動性の高い商品も取り扱うため、投資家への情報提供や説明責任が強く求められます。これにより、投資家は十分な情報を基に投資判断をすることができます。

第二種金融商品取引業も情報提供は必要ですが、取り扱う商品が限られているため、情報の種類や量が第一種に比べて少なくなる場合があります。

 

・資本要件

第一種金融商品取引業は、その業務内容の性質上、高い資本要件(5,000万円)が求められます。これにより、大規模な取引や複雑な金融商品の取り扱いが可能となります。

第二種金融商品取引業は、業務の規模や内容に応じて比較的低い資本要件(1,000万円)での運営が許されています。

第二種金融商品取引業に登録するための条件

金融商品取引業は金融商品取引法第2条第8項に掲げるいずれか(有価証券の売買、市場デリバティブ取引、外国市場デリバティブ取引、有価証券の引受け、有価証券の売出しなど)を業として行うことで、原則として内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。

 

そして、第二種金融商品取引業は登録制であり、法人(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)でも、個人でも登録申請を行うことができます。

 

登録申請から業務開始までの流れは、以下の通りです。

参考関東財務局「登録に係るQ&A

 

ちなみに、無登録で営業した場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または両方の刑罰を受けることになります(金融商品取引法第197 条の2)。

 

第二種金融商品取引業の登録を受けるためには、法人の場合、資本金が1,000万円以上であること、コンプライアンス部門が営業部門から独立していることなど、最低限クリアすべき要件が細かく定められています。具体的には、以下の要件を満たす必要があります。

・人的要件

営業部門から独立したコンプライアンス部門において責任者を定めること。コンプライアンス部門の責任者および担当者は、金融機関でコンプライアンスに関わる十分な知識と実務経験を有すること。

・役員の適正性

会社の経営者・役員が、金融商品取引業、経営管理およびリスク管理等について十分な知識・経験を有すること。経営者・役員に不適切な者(破産歴がある、金融商品取引業の許可取り消し経験があるなど)が含まれていないこと。

・投資家保護の体制

内部管理の責任者が適切に配置されること、投資家の資産を適切に管理し、情報漏洩や不正取引のリスクを低減するための体制が確立されていること。

 

信託受益権の販売・媒介、ファンドの組成・私募など、第二種金融商品取引業のどのような事業スキームで登録を受けるかによっても、登録申請から業務開始までの流れは異なります。

 

業務を継続するためには、金融商品取引法をはじめとする法令遵守、内部統制・社内規程、コンプライアンス体制・営業体制の整備、法的書面の整備を継続して行うことが求められます。

 

いずれにしても、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業ともに登録期間は6ヶ月〜1年以上かかることも珍しくなく、現在の登録要件はとても厳しくなっています。検査に対応できる社内体制の維持も必要になります。

クラウドファンディングとの関連性

クラウドファンディングにはいくつかのタイプがありますが、購入型や寄付型などの「非投資型クラウドファンディング」は金銭的価値によるリターンを伴いませんので、事業者には金融商品取引業の登録は求められません。

 

一方、「投資型クラウドファンディング」の多くは、金融商品取引業者の登録が必要です。

 

投資型クラウドファンディングのレンディング(融資)型は、投資家からの出資金をクラウドファンディング事業者を通じて企業に融資して運用する仕組みです。第二種金融商品取引業に加え、貸金業法に基づく貸金業の登録も必要になります。

 

投資型クラウドファンディングの不動産ファンドでは、事業スキームによって「第二種金融商品取引業の登録」及び「不動産特定共同事業許可」が必要になるケースと、「不動産特定共同事業許可」のみで業務を行えるケースに分かれます。

 

・クラウドファンディングの種類や詳細についての解説記事はこちら

まとめ

第二種金融商品取引業者とクラウドファンディングには関連性があり、登録や規制を通じて、投資家保護とクラウドファンディングの健全な発展が図られています。

Supervisor

監修者

水野 崇

Mizuno Takashi

1972年、群馬県太田市生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒業後、東京エレクトロン株式会社に営業職として就職。信念を貫き自らの人生を切り開いていくことを決意し、2003年、30歳で早期退職。個人投資家(株式専業トレーダー)に転身。これまでに年間最高売買代金350億円超、月間最高利益2414万円を達成。
法人経営に携わり複数事業のスタートアップに参画、スモールM&Aを経験。豊富な投資実績を評価され、証券会社等からセミナー講師・金融記事執筆・投資ファンド設立のビジネス提案を受ける。ライティング実績は10年以上あり、大手金融機関など月20本の執筆・監修案件を現在担当。
一人でも多くの方の金融リテラシー向上を支援したいと感じ、2018年12月にCFP資格の全6課目一括と宅地建物取引士資格を同時合格。独立系ファイナンシャルプランナーとしてライフプラン、資産運用、不動産、相続・資産承継など、年間100名以上の個別相談に対応。
日本FP協会「2021年FP広報センター」スタッフ業務に携わり、全国1000名を超える方から寄せられる「くらしとお金」の電話相談を1年間担当。大学や事業法人で講師を務め年80回登壇。学校法人専門学校では非常勤講師として金融リテラシー講義(2023年度は180コマ)を毎週行っている。

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